れっきとした歴史 (第11回目)
「日本の天気予報」
これは、誰も取り上げないマニアックな人物や物に対して、スポットライトを当て、その歴史について、助手いさおが浅く・狭く紹介するコーナーです。
「天気予報が外れて雨が降ってきたよ」と嘆いている方がおられますが、私もその一人です。そこで、今回は「日本の天気予報の歴史」についてお送りしたいと思います。
1871年(明治4)7月、明治政府の省庁のひとつ、「工部省」に、国土計測を行う部署が設置されました。この部署のイギリス人所長と副所長が、日本での気象観測の重要性を主張し、1875年(明治8)に今の東京都港区虎ノ門に「東京気象台」が開設され、同年の6月1日から観測が始まりました。
同年の9月からは、イギリス人の気象技術を日本人が学び、後に、彼らは、全国に設置された観測所へと、配属されました。
1883年(明治16)3月1日、東京気象台で、初めて天気図が作成され、国民への天気図の配布が始まり、この時は、天気図の配布だけでしたが、翌年1884年(明治17)6月1日、日本初の気象予報が発表されました。その内容は、
「全国一般、風ノ向キハ定マリナシ、天気ハ変ワリ易シ、但シ雨天ガチ。」というもので、現代の言葉に直すと、「全国的に風の向きはバラバラで、天気は変わりやすいが、雨になる可能性も高いだろう。」となり、あまりにも大雑把で、全国の天気をひとくくりにしていたのは、今から考えると、かなり笑えますが、日本の天気予報の歴史は、ここから始まった、ということです。
ちなみにこの6月1日を記念して気象記念日になっています。
現在は、全国約1300か所に「アメダス」と呼ばれる地域気象観測システムが設置されており、気温、風向き、降水量などの観測データが、気象庁へ送られています。さらに、「気象衛星ひまわり」による、宇宙からの観測も行うことで、アメダスがない場所の気象情報(雲や水蒸気量)を得られることも可能になりました。得られた気象データも膨大になり、これらのデータをスーパーコンピュータが解析、計算し、1~3か月先までの天気予測を行い、その結果を気象予報士が、分析、修正して、実際の天気予報がつくられるということです。
さて、測候所の話ですが、福井県には、福井市と敦賀市に測候所があったのですが、2005年(平成17)に敦賀の測候所は無人化になり、福井地方気象台、1か所になりました。
富山も同じで、富山市と高岡市の伏木(ふしき)に測候所が、ありましたが、1998年(平成10)には伏木の測候所は無人化になりました。
この伏木測候所は、1883年(明治16)12月1日に日本で最初の私立の測候所として、設立されたもので、現在は、気象資料館とアメダスのデータ測定の2つの顔を持っており、国の有形文化財にも指定されている、洋風のオシャレな建物です。
気象に興味のある方は、連休にでも行ってみてはいかがでしょうか?
場所:富山県高岡市伏木古国府12-5 能越自動車道、高岡北インターから車で15分、JR氷見線伏木駅下車徒歩5分です。
歴史のお話はこの辺にしておき、今回は「気象用語」について3つほど調べてみましたので、紹介したいと思います。
1.摂氏と華氏との違い。
摂氏は、水が氷になる温度(凝固点)を0℃、水が沸騰する温度(沸点)を100℃としています。
それに対して、華氏は、水が氷になる温度が32°F、水が沸騰する温度が212°Fです。摂氏は凝固点と沸点の差が100であるのに対して、華氏は180となり、つまり摂氏で1℃上昇は、華氏で1.8°F上昇となります。
世界的には摂氏が使われていますが、イギリスやアメリカの英語圏では華氏を使用しています。
ちなみに、CとFの意味ですが、Cは、セルシウスの意味で、スウェーデンの天文学者セルシウスが考案したことに由来しています。Fは、ドイツの物理学者ファーレンハイトが考案したことに由来しています。
2.放射冷却現象とは?
簡単に言うと、夜になって地面が、熱の放射で、冷たくなることです。そのため、地面に接している空気も冷やされ、気温が下がる現象です。
昼間は、太陽からの熱放射パワーが強いので、太陽の熱が地面を温めます。夜になると、太陽からの熱がなくなり、地面から熱が宇宙へ逃げていきます。そこで、地面と接している空気の温度も下がって、明け方、一番気温が低くなります。
放射冷却現象が一番顕著に現れる気象条件は、晴れた夜と風がない時です。
雲があると、地表に、布団をかけた状態と同じで、熱は逃げません。また、風があると、上空の暖かい空気と地表の冷たい空気が混ざり合い、それほど顕著に気温は下がらないということです。
3.エルニーニョ、ラニーニャ現象とは?
エルニーニョ現象とは、太平洋の赤道を中心に、日付変更線から南米海岸にかけて、海面水温が平年より高くなり、その現象が1年以上続くことをいいます。逆にラニーニャ現象は、海面水温が平年より低くなる現象です。それぞれ数年おきに発生します。
それでは、この現象が日本に与える影響ですが、エルニーニョ現象が起きると、日本は冷夏で暖冬になります。ラニーニャ現象が起きると、猛暑になり、厳冬になります。
では、2019年今現在はどうかというと、2019年8月9日、気象庁発表では、エルニーニョ現象もラニーニャ現象も発生していないということです。
さて、今回は天気予報の歴史と、気象用語の説明をいつものごとく狭く浅くお届けしましたれっきとした歴史でしたが、いかがでしたでしょうか?
今年の冬の雪の量も気になりますが、「昨年の冬と、一昨年の冬を足して2で割ったような、平年並みの降雪が、一番いいなぁ」と感じたいさおでした。
天津 弥
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