れっきとした歴史 (第7回目)
「ますの寿司」
これは、誰も取り上げないマニアックな人物や物に対して、スポットライトを当て、その歴史について、助手いさおが浅く・狭く紹介するコーナーです。
さて、皆さんは「駅弁」といえば何を思い浮かべますか?
焼きサバ寿司?峠の釜めし?牛タン弁当???いえいえ、大切なものを忘れていませんか?そう富山の「ますの寿司」です。
今回は、ますの寿司の歴史について取り上げます。
まずは、ますの寿司を知らない方のために簡単に説明します。
ますの寿司は、富山県の郷土料理で、マス(サクラマス)を用いた押し寿司のことで、円の形をした木製の入れ物の底に、笹の葉を放射状に敷き詰め、その上にますの寿司が乗っているのが特徴です。
【ますの寿司の起源】
ますの寿司の起源は2つの説があります。
「その.1」
平安時代に富山を流れる「神通川(じんづうがわ)」のほとりの「鵜坂(うさか)神社」で、五穀豊穣の願いと、自然の恵みへの感謝の儀式として、ご飯の上に切り身のマスを乗せ、青葉に包んで、神前に献上したのが、始まりだといわれています。
「その.2」
江戸時代、享保年間に、富山藩3代藩主「前田利興(としおき)」の家臣で料理人でもあった「吉村新八」が、食通で知られる、江戸幕府8代将軍「徳川吉宗」に鮎の押し寿司を献上したところ、大変喜ばれたそうです。そこで、神通川でとれる「ます」でも押し寿司を作ってみてはどうか?というのが、始まりだといわれています。
【現代の歴史】
1912年(明治45年)に「源(みなもと)」という、ますの寿司製造会社が、駅弁として販売するようになり、全国的に広く知れわたり、今では、百貨店やスーパー、コンビニなどでも売られるようになりました。現在は、富山市内で十数店舗がますの寿司の味を継承しており、各々お店で、特徴があり、ますの肉厚度、酸味具合、すし飯の柔らかさなど違いがあります。しかし、近年は、神通川では、天然のサクラマスが取れなくなり、漁獲量が少なくなったことから、北海道や海外のサクラマスを使用するようになっています。
§§§§§ わたくしが食べてみたい北陸の駅弁紹介 §§§§§
私が食べてみたい、あるいは食べたことのある北陸の駅弁を独断と偏見で5つ紹介します。
◆ぶりカマめし(冬季限定)(富山)
先ほど紹介しました、源という会社が製造している弁当で、富山駅などで買うことができます。
冬季限定で、寒ブリのブリカマ(ブリのエラの部分)が柔らかく煮てあり、甘辛の特製タレで、香ばしく焼き上げたものが、富山県産米の酢飯に乗ったものです。
お値段:1100円
◆手押し焼き鯖寿し(福井)
越前田村屋などが製造している駅弁で、焼いた鯖の切り身一枚が丸ごとシャリの上に乗っており、鯖とシャリの間にはガリが挟んであります。
酢飯は福井県産コシヒカリ、鯖は、脂がのったものを厳選しています。
お値段:1100円
◆若狭牛ステーキ重(福井)
一乃松が製造している駅弁で、ご飯の上に牛ステーキと牛そぼろが乗っています。おかずは、だし巻き卵とかまぼこで、箸休めに丁度いい量となっています。
牛肉はもちろん若狭牛で、自家製のタレで味付けしてあります。
お値段:1365円
◆香ばしい焼きかにめし 浜焼き(福井)
番匠本店が製造している駅弁で、ズワイガニのメス「セイコガニ」のカニ味噌を合わせただし汁で炊いたご飯の上に、
殻のまま直火であぶったズワイガニのオスのカニ足四本が乗っています。
お値段1250円
◆甘えび寿し(石川)
高野商店が製造している駅弁で、全国でも珍しい、「甘えび」がメインの押し寿司です。秘伝の酢で締めてあります。
桜色の甘えびが食欲をそそる一品で、石川県産のコシヒカリを使用しています。
お値段:1100円
ちなみに私はこの中で「焼き鯖寿し」を食べたことがあるのですが、「サバがちょっと苦手」というかたも、焼いてあることで、臭みもなく、美味しくいただくことができました。
さて、今回は、ますの寿司をはじめ、駅弁をいろいろ紹介いたしましたが、スタジオの皆さん、リスナーの皆さん、旅のお供の好きな駅弁はありますでしょうか?
以上、れっきとした歴史でした。
天津 弥
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