先週水曜の4月1日、北信越代表の敦賀気比が第87回選抜高校野球大会で悲願の初優勝を飾りました。この快挙は全国ニュースでも大きく取り上げられ、福井県中が大騒ぎ。敦賀気比ナインを祝福に送りました。県勢、北陸勢としても甲子園で優勝するのは春夏通じて史上初です。
今回栄光を掴みとった敦賀気比ですが、その影には挫折がありました。今回はその挫折から栄光への軌跡を紹介しましょう。
昨年夏の福井県勢初の決勝進出がかかった甲子園の準決勝。大阪桐蔭との準決勝に挑んだ敦賀気比は9-15の大敗を喫しました。これがナインの原動力になりました。県勢初の悲願への時計の針はここからゆっくり動き始めたのです。
主戦平沼翔太や篠原涼、山本皓大ら主力が新チームに残ったものの、例年夏場こなしていた練習試合は30~40試合減り、わずか1カ月足らずで秋の県大会が開幕。“ぶっつけ本番”で、自分たちはどれだけ戦えるのか。不安を抱きながらのスタートを迎えました。
こうした危機感が、ナインの練習に取り組む姿勢を変えました。ノックや打撃練習など、普段の何げない練習で今まで以上に“1球への集中力”を高めました。練習後の自主練習には自然と選手が集まり、練習時間ぎりぎりまでバットを振り続けました。
そして迎えた秋の県大会は準優勝。北信越大会では、準決勝までの計3試合をコールド勝ちし、全4試合で失点はわずか2。実戦を積み重ねるごとにチームは着実に力をつけ、東哲平監督は「一戦一戦成長していく姿があった」と語っています。
冬場は、振り込みなど地味な練習を延々と続け、体と精神力を鍛え上げながら、春を待ちました。迎えたセンバツ大会。篠原主将の選手宣誓で熱戦の火ぶたが切られ、ナインは接戦を次々とものにしました。優勝候補筆頭の仙台育英や強打の静岡に勝って迎えた準決勝。対戦相手は昨夏と同一カードになった大阪桐蔭(おおさかとういん)です。“あの夏”の悔しさを晴らすように打線が開花。11安打11得点の猛攻で雪辱を果たし、決勝の舞台へ登り詰めました。
東海大四との初優勝を懸けた一戦。チームは一つになりました。何度も迎えたピンチを平沼の強気な投球で打ち取り、野手陣のここ一番での堅守がエースを助け、指揮官も毎回熱い言葉で選手を鼓舞。チームの思いが詰まった1球を松本哲幣が左翼席へ放り込みました。一丸でつかんだ悲願です。
「この瞬間を待ち望んでた。絶対できると思ってここまでやってきた」と目を赤くした指揮官。閉会式後、篠原主将は喜びに浸りながらも「今の実力では夏の甲子園はもちろん、県大会でも勝てない。しっかり練習してまたここに戻ってきたい」と表情を引き締めた場面がありました。その視線は、春夏連覇を見据えているようでした。
敦賀気比ナインは挫折から立ち直り見事初優勝を果たしました。夏の甲子園での活躍と成長が今から楽しみです。
(福井新聞の記事を参考にしています。)
八木正幸のスリーミーなひととき
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