れっきとした歴史 (16回目)
「富山市会社役員夫婦放火殺人事件」
これは、誰も取り上げないマニアックな人物や物に対して、スポットライトを当て、その歴史について、助手いさおが浅く・狭く紹介するコーナーです。
今回は、未解決事件の第二回目として「富山市会社役員夫婦放火殺人事件」について取り上げます。前回同様、急展開を見せるのか?
ではさっそく、この事件についての詳細を述べたいと思います。
2010年(平成22)4月20日午後0時25分ごろ、富山市大泉(富山地方鉄道大泉駅すぐ前)の3階建てビルの2階から火災が発生。
約80平方メートルを焼き、火は約50分後に消し止められましたが、このビルの所有者で2階に住む 不動産会社役員の夫婦の遺体が現場から発見され、司法解剖の結果 夫婦の死因は首を絞められたことによる「窒息死」であることがわかり、
富山県警は、殺人のあと放火したものと断定し、80人体制で捜査を開始しました。
白昼の住宅街で凶行された事件ですが、手掛かりや目撃情報が少なく、また火災により現場が荒れて、証拠や遺留品の採取が難しく、捜査は難航しました。
事件が急展開したのは、2010年6月「週刊文春」に対して匿名で、CD-Rと、この事件の手書きの現場見取り図が送られて、文春の記事になったことです。
富山県警は、CD-Rと見取り図の提出を文春側に求めましたが、「今後の取材源の秘匿である」ことを理由に提出を拒否。2012年(平成24)8月1日に県警は「差し押さえ令状」により、CD-Rと見取り図を押収しました。
CD-Rの中には、お金が必要だったことが書かれ、また見取り図は、犯人または警察 消防の一部しか知りえない情報が書かれており、CD-Rの文書作成者として、「被害者夫婦」の知人であり 富山県警察官の名前がローマ字で残っていたことから、当時54歳の警察官を2012年10月31日に情報を漏らしたとして、地方公務員法違反(守秘義務)の疑いで逮捕しました。
その後の調べで、その年の12月22日にこの放火事件に関わったとして、建造物放火等死体損壊の疑いで再逮捕となりました。
容疑者は当初、容疑を認めていましたが、以下の理由により嫌疑不十分となり富山地方検察庁は、不起訴処分としました。
・容疑者はCD-Rの作成時期を6月上旬としているが、実際の記録は、5月12日であったこと。
・CD-Rの作成時期(5月12日)は、容疑者が当時、高岡警察署の留置管理課で勤務をしており、アリバイがあること。
・CD-Rの文書ソフトのバージョンが、容疑者が使用したと説明したノートパソコンと違うこと。
・ノートパソコンにCD-Rに絡む文章を作成した痕跡がないこと。
・夫婦の首をひもで絞めたとの供述だが、手で絞めた可能性があること。
・近所の防犯カメラに容疑者が映っていないこと。
・凶器や財布を川に捨てたとあるが、見つからないこと。
・2013年5月の処分保留以降、「自分がやったのかわからない」と供述が曖昧になり、動機も不十分である。
しかし、被害者の遺族は2013年(平成25)8月2日不起訴処分は不当だとして、富山検察審議会に審査を申し立てました。新たな証拠である「事件の3時間後に、容疑者の警察官が21万円をATMに入金していた」ことがあげられましたが、被害者の財布の中に入っていた金額が不明であったため、証拠としては採用されず再度不起訴処分となりました。
これにより、事件は暗礁に乗り上げ2013年10月17日警察庁捜査特別報奨金に指定され犯人逮捕につながる情報には、上限額1000万円の懸賞金が支払われることになりましたが、有力な手掛かりはなく現在に至っています。
週刊文春へ送られたCD-Rと見取り図も誰の手によるものかも謎のままです。
以上、れっきとした歴史でした。
天津 弥
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